※こちらは、内容にも言及した【ネタバレあり】の感想になります。
未読の方はネタバレなし版をご覧ください。
既に読んだ方、内容を知っても問題ないという方はこのままお進み下さい。

宇佐見りん(著)『推し、燃ゆ』河出書房新社 ★ネタバレあり
さて、
芥川賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた話題の作品ですが、
正直に言うと、小説初心者の僕にはちょっと難しかったです。
扱っているテーマが、というのももちろんそうなのですが、作中に比喩表現やぼかした表現が多かったですよね。
そこが魅力なんだろうなぁ…という感じはしましたが、僕一人の力ではどうも核心をついた理解ができなかった感触があります。
なので、下のコメント欄からぜひ皆様の見解を教えて下さい。
そんな僕でもなんとなく、を抜け切らない範囲で解釈した見解を以下に記します。
まず、主人公が抱える「生きづらさ」について。
おそらくなにかしらの発達障害を抱えているのでしょう。診断名が下っていたことからもここは間違いないと思います。
ただ、あえてそこで止めているというところが読者にリアリティを与えているのかなと思いました。
もともと発達障害関連の症状というのは段階は違えど誰しも少なからず持っている部分ですし、ここでハッキリと病名が明かされていないからこそ、
「あかり」と「読者」を引き離さない状態が作られていた気がしました。
そして、推しを失っていくあかりの心情について。
特に印象的だったのがライブ会場のトイレでのシーン。
やめてくれ、あたしから背骨を、奪わないでくれ。推しがいなくなったらあたしは本当に、生きていけなくなる。
本書p.112より引用
この描写が、のちにラストシーン(p.124)を迎える僕をヒヤッとさせます。
ラストの綿棒のケースのくだりでは、あかりが自殺してしまうんじゃないかと思って片目を瞑りながら読んでいました。それぐらい鬼気迫る描写だったと思います。
だけど、そうではなかったことにホッとしている間にあっさりと最後まで読み終えてしまいました。
いかんいかん、ともう一度、そしてもう2,3度ラストを読み返すうちに、あかりはむしろ「生きようとしている」ことに気付きました。
今まで、「背骨」という表現を使うほどあかりの中心を占めていた「推し」、そしてそのフチを囲っていた「あたし」、そういう隔たりを全てぶち壊そうとしたのが綿棒の一件なのかと。
いや、まてまてまて、なんであかりはそんなに割り切った?トイレから何が起こった?
と思いさらに巻き戻して読み返すと、トイレとラストの間に本作品においてかなり大事と思われる推しの家にいくシーンがありましたね。
ここも、もう2,3度読み返してみました。
マンションから人が出てくるくだりは、読み返せば読み返すほど、どちらにも解釈できる気がしました。つまり、その女性が「推し」のそれなのか否か。
ただ、ここを白黒つけることにあまり意味はないのかな、と。
それよりも大事なのがおそらく次の文章。
なぜ推しが人を殴ったのか、大切なものを自分の手で壊そうとしたのか、真相はわからない。未来永劫、わからない。でももっとずっと深いところで、そのこととあたしが繋がっている気もする。
本書p.123より引用
ここからは完全に僕の推測なので間違っているかもしれません。
が、今のところ僕はこう解釈しています。
「推し」にも「あかり」にも根底に「分かってもらえない」という共通した感情があった。
「推し」はメディア、ファン、大衆…etc
「あかり」は両親、身内、先生…etc
本当はもっと複雑な感情だろうけど、自分以外の人間に向けた感情という点では一致していた。
あかりはそれを、ベランダの件で自分なりに確信、解釈した。
そして、それ以降同じように「推し」に執着することは、今まで自分がされてきた行いを、共通項を持つ「推し」にぶつけてしまうことに他ならない。
だからこれまでの自分を一度すべて破壊しようと、綿棒の一件に繋がった。そして、最後の「生きる姿勢」にも。
誰よりも「推し」を慮るからこその、あかりの潔さなのかな…と思いました。
そう考えると、当初抱いた印象とは打って変わって、むしろ「希望」すら感じるラストでした。
あと、物語の本筋とは逸れますが、
この本の表紙カバーのピンク色、そしてそれを外した時に現れる青色はそれぞれ、あかりの本体、中心部の推しの色を表現しているのかなぁと思いました。
まるっきり見当違いかもしれませんが…(笑)
と、いったところで長くなってしまいましたが、以上が小説初心者の僕なりに絞り出した解釈になります。
きっと皆さんの中で、「いや、それはどうなの」「ここは違うだろ」という点があったかと思います。
その違和感がそのまま解釈の精度を高めることに繋がりますので、冒頭でもお伝えしましたが是非是非下のコメント欄から皆様の見解を教えて下さい。
心よりお待ちしております。(^^)

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