
石井あらた(著)『「山奥ニート」やってます。』 光文社
「世界一受けたい授業」というテレビ番組で取り上げられていたことをきっかけに興味を持ち、購入。
この本は、和歌山県の山奥で「山奥ニート」をされている石井さんによって、その生活の様子やそこに至るまでの経緯、根本にある考え方など様々なことが書かれている本です。
何を隠そうこの僕も記事執筆時点では同じくニートですので、共感できる部分がたくさんありました。
ただ、一般的にはスムーズに受け入れられないこともあるのかなと思いますので、
たいていの人が思い浮かべるであろう疑問を先回りするような形で紐解いていきます。
まず第一に、山奥ニートの皆さんはまったく働いていないわけではありません。
彼ら(出版時点で15人居るそう)が住む家は家賃こそ無料ですが、電気代や光熱費等々の関係で一人あたり、月に1万8000円は必須で納めなければなりません。
なので最低でもその分は働かないと生活できなくなってしまいます。
稼ぎ方は人それぞれですが、たとえ個人で稼ぐスキルがなくとも、近隣の方のお手伝いをするなどの形で仕事は舞い込んでくるそうです。
次に、まったく誰の役にも立っていないわけではないということです。
「ニート」と聞くとどうしても、何もせずただ堕落した生活を送り、社会に何も生み出さない邪魔者みたいなイメージを持つ方がいるかもしれませんが、
前述したように彼らは近隣に住んでいる住民(平均年齢80歳超)の手助けをしているという側面がありますので、ニートという字面と先入観だけで一方的に判断するのは違うかなぁと個人的には思っています。
そして最後に、それが彼らにとっての最適解であるということです。
街中で働いて暮らすという、一般的に「普通」と言われる生活を送るのが難しかったり人一倍疲れてしまう人も世の中にはいます。
たとえば著者の石井さんは、アルバイトをしていた時どうしても食器がちゃんと運べずに割りまくってしまい、弁償代として働いた賃金以上にお金を取られたことがあるそうです。
そんな、いわゆる「普通」が難しい人にとっては、山奥ニートというのは生きるための選択肢になっていると言えます。
実際、本の中で石井さんが「山奥は理想郷」「ここに来るまでは、死んでもいいやと思っていた」という言葉を残されていたのがすごく印象的でした。
個人的な話ですが、僕もこの「普通」に対する耐性が平均より低いことを自覚しています。
程度でいうとそこまでではないものの、なんか他の人より疲れちゃうんですよね。
なのでこの本に書かれていたことは、僕が日頃感じていることを言葉にしてくれたような痛快さがありました。
この言葉なんてまさに。
できる人と、できない人の間には、できるけど疲れる人がいるんだ。必要があれば働くけど、ずっと働きたいわけじゃない。
本書p.275より
まったく働けないわけではなく、ちょっとできてしまうからこそ、それ以上働かないことを「甘え」とされてしまうあの感じをまさに言い表してくれていて少しホッとしました。
なのでこの本は、同じように
・なるべく働きたくないという考えの方
・今の生活に疲れた方
・普通ではない暮らしに興味がある方
などにオススメできる内容でした。気になった方はぜひ一度読んでみて下さい。
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