※こちらは、未読の方を想定した【ネタバレなし】の感想です。
既にお読みの方は、ネタバレあり版へお進み下さい。

山本文緒(著)『自転しながら公転する』新潮社 ☆ネタバレなし
2021年の本屋大賞にノミネートされたことから購入。
著者の作品は今まで読んだことがなかったので、期待と不安を半分ずつ抱きながら読み進めました。
が、ちょっと読んだところで「不安」の部分は完全に拭い去られました。
文章がスッと入ってくる感覚があったからです。
「すごく読みやすい、この小説…。」と直感的に思いました。
ザッとしたあらすじはこんな感じ。
東京で働いていた32歳の都は、親の看病のために実家に戻り、近所のモールで働き始めるが…。恋愛、家族の世話、そのうえ仕事もがんばるなんて、そんなの無理!誰もが心揺さぶられる、7年ぶりの傑作小説。
新潮社公式ホームページより引用
僕は最初この文章を見たとき、「掴みどころのない紹介だな…」と思いました。
なにかこうインパクトに欠けるというか、例えば『滅びの前のシャングリラ』にあったような衝撃の設定があるわけでもなく、
『推し、燃ゆ』のように表立って特徴的なテーマを扱っているわけでもない。
実際、登場する人物たちも物凄くスリリングな出来事に巻き込まれたり、というよりはごくごく普通の日常を送っています。
なんだけど。
だからこそ。
描かれるストーリーが、この上ないリアリティを伴ってこちらに襲い掛かってくる感覚がありました。
決してファンタジーなんかじゃない、まるで実在する誰かの日常を切り取ったかのような世界。
スッと入ってくる文章とは裏腹に、ズドンと心に響くものがありました。
地の文の語り手が主人公から母親に移るパートもあったりと、ひとつの世界を様々な角度から繊細に表現されている印象を受けた作品でもあります。
また、これは小説初心者の僕にとっては大変ありがたかったところなのですが、
連載時にはなかった「エピローグ」と「プロローグ」が単行本化に伴って追加されており、
結末を迎えた時に起こりがちな「え?それで?結局どうなったの!?」というモヤモヤがありません。
そのおかげで物語を鮮明に捉えることができ、すべてをひっくるめて「自転しながら公転する」というタイトルの意味に気付いた時…。
「僕も頑張ろう」
と力を貰うことのできた作品でした。
読みやすい文章でスラスラ進んでいくことができるので、よかったら是非一度読んでみて下さい。
読み終わったら是非、こちらで感想を聞かせて下さいね(^^)
コメント