【感想/書評】山本文緒(著)『自転しながら公転する』★ネタバレあり

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※こちらは、内容にも言及した【ネタバレあり】の感想です。

未読の方は、ネタバレなし版へどうぞ。

既にお読みの方、内容を知っても構わないという方はこのままお進み下さい。

自転しながら公転する

山本文緒(著)『自転しながら公転する』新潮社 ★ネタバレあり

さて。

なんとも意味深なタイトルを掲げたこの本ですが、個人的にはすごく好きな作品でした。

表紙を見たときはなんとなく、10代女子のキラキラ青春小説かと思ったのですが、蓋を開けてみると全く違いましたね。

30代女子のゴリゴリ現実小説でした。(笑)

ただ、それがリアリティを伴って襲いかかってきた感じがして、心に響くものがありました。

ザッと以下の3点から見ていきたいと思います。

ひとつの世界を多方面から描くことによるリアルさ

僕は、

「実家にお世話になっている」

「キャリアに悩んでいる」

「結婚・子育てに積極的になれない」

など様々な点で都に通ずる点が多く、自然と都に感情移入することが多かったです。

が、都以外の人物に激しく心を揺さぶられる場面もありました。特にグサッと来たのがこの文章。

俺は大変なんだよ。休職して会社に戻って、微妙なポジションで肩身が狭くても、頑張って家族のために働いてるよ。

本書p.216より引用

都が貫一を家に連れてきた場面での父の言葉です。

口数が多い方ではない父親が、ポロッと漏らした本音。

僕も実家暮らしが長いので、この「家計を支える父親が裏で抱えている苦労」という部分にはすごく訴えかけられるものがありました。

そしてそこから、「僕も早く両親をラクにさせてあげられるように頑張ろう」と力を貰いました。

そのほか、都がそよかに心情を告白され自問自答するシーンにも印象的な言葉がありました。

何かに拘れば拘るほど、人は心が狭くなっていく。幸せに拘れば拘るほど、人は寛容さを失くしていく。

本書p.318より引用

まさに、という感じです。

このあたりの人物間のやりとりや心情描写が物凄くリアルなので、思わず現実世界に投影して考えさせられるというのがこの本の魅力だと思います。

ひとりの人間を多方面から描くことによるリアルさ

都の心情描写にしても、本当にリアリティがありました。

ネットでのレビューを見ていると、「男性は貫一の方に共感するのでは」という意見を見かけましたが、

僕は終始、都の心情に共感していました。

というのも、都はややHSP気質なところがあったと思うんです。

衝突が起こらないよう常に誰かの機嫌を伺っていたり、だけど一人の時間が少なくなると余裕がなくなったり。

トイレの中は当たり前だがひとりきりになれて、都は心からほっとした。知らない土地に来て、知らない人と口をきいて、慣れない労働をして、疲れないわけがない。

本書p.445より引用

こういうところが繊細さんの典型的な特徴で、僕も同じ気質を持っているのですごく共感できました。

ただこの気質は一見、人に迷惑をかけないでおこうとしてるように見えて、実は自分を守りたいだけだったりするんです。

そのせいで勝手に高くしたハードルを基準にするから、人に求めすぎてしまう部分があったり。↓

東馬は煙草に火をつけた。隣に自分を座らせておいて、吸っていいかと聞かないんだなと都は眉を顰めた。

本書p.196より引用

こんな風に「都」というひとりの人間をとっても、その性格や性質に日が当たる場面もあれば、影となる場面もある。

まさに自転している地球のようだなぁ…なんて思いながら、次の項目に繋がります。

「自転しながら公転する」というタイトルが示す意味

貫一と都が初めて食事に出かけた夜、序盤ながら意外にもサラッと登場した「自転しながら公転する」という話。

概念としては有名で、

地球が太陽の周りをぐるっと公転しているんだけど、(だから日本は春夏秋冬という季節を巡る)

その時、地球そのものも実はスピンするように自転しているというもの。(だから1日には昼と夜がある)

加えて、太陽自体も常に動いているからこれらは二度と同じ軌道を辿ることはないと、貫一がお得意の蘊蓄で説明していましたね。(笑)

この事実と本書のストーリーを照らし合わせた時に考えられるのは、(あくまで僕の個人的見解ですが…)

太陽自体がゆっくり動いている、つまり世界そのものが少しずつ動いているというのは、桃枝から都、都からみどりへと流れいく時代を表していて、

地球が太陽のまわりを公転しているのは、皆それぞれが色んな場所や立場、たとえば家→病院→職場→家とか、正社員→契約社員→アルバイト→正社員とか、そういったことがぐるぐるしていることを意味するのかなと。

そして地球そのものが自転しているのは、それぞれがあーでもないこーでもないと考えを巡らせている状態、つまり頭の中をぐるぐるさせていることを表しているのかなぁ…と思いました。

桃枝の考えが気に食わなかった都も、自分の娘に同じように思われているし、(笑)

ぐるぐるする地球が光と影を生むように、同じ出来事もどこから見るかで景色が変わるし。

でも、太陽や地球が二度と同じ軌道を辿らないように、都が桃枝に感じる想いとみどりが都に感じるそれは同じように見えて実は微妙に違っていたりして、

以上のことをすべてひっくるめて、「それでいいんだよ」というメッセージを感じたタイトルであり作品でした。

僕が本作品で最も感動した文章にも繋がります。

「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ」

本書p.477より引用

暗くなって落ち込んだりする時もあれば、明るくなって嬉しかったりすることもあって人生色々あるけど、他の誰でもない自分が歩む自分の道なんだから、ありのまますべて受け入れていこうと、

そんなメッセージを受け取りました。

めちゃくちゃ長く語ったわりに、まったくの見当違いかもしれませんが。(笑)

ま、それはそれで良しとして、今のところ僕はそう捉えています。

良かったら下のコメント欄から、皆さんの感想も教えて頂けたらと思います。

長文にお付き合い頂きありがとうございました。

↓公式ホームページ

山本文緒『自転しながら公転する』結婚、仕事、親の介護――全部やらなきゃダメですか?あたたかなエールが届く共感度100%小説!
結婚、仕事、親の介護――全部やらなきゃダメですか?あたたかなエールが届く共感度100%小説!

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