※内容にも言及した【ネタバレあり】の感想です。既にお読みの方、内容を知っても構わないという方のみお進み下さい。
まだお読みでない方はネタバレなし版をどうぞ。

伊与原新(著)『八月の銀の雪』 新潮社 ★ネタバレあり
さて。
本屋大賞ノミネート作ということで手に取った作品でしたが、
一言でいうと「綺麗…」という印象を受けました。
文学作品でありながらどこか神秘的というか柔らかいベールに包まれているような、まさに「八月の銀の雪」という作品だったと思います。
他のノミネート作と比べるともう議論の余地がないと言いますか、
「あれ?あそこの場面ってどういう解釈をすべきなの?」
みたいなことがない作品だったので、正直ネタバレありの感想は書かないでおこうかなとも思ったのですが、一応書いてみます。
5篇とも暗闇に一筋の光がさしたような、最終的には温かい気持ちになるお話だったので個人的には全部好きだったのですが、あえてひとつ選ぶとすれば、、
…選べないですね。
全部が全部、好きなお話でした。
どういうところが、というとそれぞれのお話でメインとなる人物が、誰かと関わり合う中で「自分の本当の気持ちに気付いていくところ」です。
コンビニ店員に偏見を持っていた就活中の学生も、
子育てや境遇に思い悩む母親も、
自分の気持ちに正直になれない会社員も、
周りに合わせることに疲れつつも殻を破れないでいた女性も、
まさに風のようにゆらゆらと彷徨い続ける男性も、
最終的にはみんな、自分の中にある「核」に従いながら生きていこうとするところが「あぁ…綺麗だなぁ…」って。
特に好きだったのがこの言葉。
たとえ何も伝わらなくても、今は構わない。いつかその意味を感じ取ってくれるような生き方を、父親である自分が見せてやればいい。
本書p.245より引用
凧をあげている滝口さんと出会った辰朗が、自分と向き合う中で紡ぎ出した言葉ですね。
神戸大学から東大大学院博士課程というトップレベルを極められた伊与原先生と比べると足元どころか靴底にも及びませんが、
僕も一応理系の道を歩んできたタイプの人間なので、全てのお話が非常に興味深く、
文学作品でありながら自然科学の参考書を読んでいるかのような気持ちにもさせてもらえた作品でした。
句読点の位置や言葉選びが個人的に好みなのもあって、すごく読みやすさを感じた作品でもありました。
皆さんはどうだったでしょうか?
小説初心者の僕にはこれ以上この作品を語る能力はないようなので、この辺で終わりにしたいと思います。
もしよければ皆さんの感想も教えて頂けると嬉しいです。
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