※内容にも言及した【ネタバレあり】の感想です。既にお読みの方、内容を知っても構わないという方のみお進み下さい。
まだお読みでない方はネタバレなし版へお進み下さいませ。

町田そのこ(著)『コンビニ兄弟』新潮文庫nex ★ネタバレあり
さて。
いつものごとく大した考察はできないので、ただただ読後漫談のような感想を書いていきたいと思います。
まずは、あらすじをおさらいしておきましょう。
九州だけに展開するコンビニチェーン「テンダネス」。その名物店「門司港こがね村店」で働くパート店員の日々の楽しみは、勤勉なのに老若男女を意図せず籠絡してしまう魔性のフェロモン店長・志波三彦を観察すること。なぜなら今日もまた、彼の元には超個性的な常連客(兄含む)たちと、悩みを抱えた人がやってくるのだから……。コンビニを舞台に繰り広げられる心温まるお仕事小説。
新潮社公式ホームページより引用
読む前はさほど気にならなかったのですが、改めて見てみると、公式のあらすじで結構ネタバレしてるなぁ…と感じませんか?笑
読んだ皆様ならお分かり頂けるでしょう。
「常連客(兄含む)」
の部分です。
この作品は決してミステリーではないものの、コンビニ“兄弟”というタイトルなのに弟にしかフォーカスされない違和感みたいなものがあって、
話が展開する中でいくつかのやりとりを重ねていくうちに、次第に輪郭が露わになって、
「あのね、光莉さん。このひと、ぼくの兄なんだ」
本書p.67より引用
で、
廃品回収を生業とする髭モジャ常連客 = 志波二彦(兄)
が発覚するところが個人的に結構なお楽しみポイントだったので、
あえて(兄含む)をあらすじに書いてしまう意味はあったのだろうか…
と思ってしまいました。^^;
ま、そんなに重要な部分ではないと思うので置いときましょう。笑
それよりも、最後まで読んだ皆さんからすると
髭モジャの兄=ツギさんが、実は散々話題にされていた「匿名ご意見番客ニセコ」でもあったことが明かされるラストシーンの方が胸が高鳴ったでしょうか。
いずれにしても、ベースとしては心温まるホッコリ小説でありながら、こういうお楽しみ要素も加えてきてくれているのがさすが町田先生だなぁと感じた作品でした。
中でも印象的だった言葉が2つあります。
ひとつは、こちら。
好きなものにがむしゃらになっているひとというのは、実は驚くほど少ない。まずそういうものに巡り合うのがとても難しいんだ。そしてそれに打ち込める環境、状態であるのもなかなか難しい。
本書p.273より引用
パート店員・光莉の息子である恒星くんに、夫・康生がかけた言葉です。
ほんとそうだよなぁ…と。
作中では趣味の漫画である程度成功している光莉と、まったく芽が出ていない、あるいはこれから芽が出ようとしている桐山が同時に描かれていましたが、
本来的にはどちらも「ずっと続けている」時点ですごいんだよ、という風なメッセージを受け取りました。
続いて、2つ目がこちらです。
「お前だけが分かってくれて、だからお前だけは何も訊かない。それってすごくありがたいことなんだ」
本書p.295より引用
恒星の親友である小関くんの言葉です。
これもすごく分かるなぁ…と。
親友って一般的には何もかもを共有している、あるいは共有しても良いと思える存在という風な捉え方がされていて、それもたしかに紛れもなく正解のひとつなんだろうけど、
そうじゃなくて、分かっているからこそ何も訊かない。
あえて、“そっとしておく”という選択をしてくれる人もまた、本人にとってはこの上なく居心地の良い存在なんだろうな…と。
とまあそんな感じで、
温かい気持ちにさせてもらいながら、ところどころ考えさせられたりもしながら、スラスラと読んでいくことのできた小説でした。
皆さんは、どうだったでしょうか。
良かったら皆さんの感想も教えて頂けると嬉しいです。
下のコメント欄か、Twitterからいつでもお待ちしております。
ではでは、特に中身のない記事でしたが最後まで読んで頂きありがとうございました。
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p.s.
物語の一番最初の場面、「プロローグ」に登場した女性は一体誰なんでしょうか…?
もしかしたら作中にふらっと登場していたのでしょうか。
僕の見落としだったら申し訳ありませんが、知っている方はぜひ教えてくださいーー。
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