※内容にも言及した【ネタバレあり】の感想です。既にお読みの方、内容を知っても構わないという方のみお進み下さい。
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東野圭吾(著)『白鳥とコウモリ』幻冬舎 ★ネタバレあり
さて。
率直な感想としては、時間を忘れて没頭させてもらった、すごく面白い作品だったというところです。
ただ、書店の店頭拡材に書かれていた「東野史上最高傑作」というのはちょっと言い過ぎかな…と思いました(笑)
いや素晴らしかったんですけどね、なんせ作品数が多いだけにね、
“史上最高”はハードル高すぎでしょ、という。
まあそれは置いといて、
ひとつのミステリー小説としては、純粋に楽しませてもらいました。
最も鳥肌が立ったのは、今も忘れません、この場面。
五代は液晶モニターに目を向け、キーボードを操作して映像を戻した。ある人物が横顔を見せている。
少年の名前は安西知希、父親の安西弘毅によれば、中学二年生ということだった。
本書p.418より引用
序盤も序盤で倉木達郎が自供したあたりから、さすがにそんなすんなりはいかないよな〜とは思っていたものの、
まさか14歳の少年が真犯人だったとは。
そして最終的に、被害者と加害者が入れ替わる形になるとは。
良いように転がされました。笑
ただ、よく考えてみると少しずつヒントが明かされていったものの構造としてはシンプルだったので、
ミステリーに精通している方の中には少年に目星を付けた方もチラホラいたのではないかな…と予想しています。
人によって意見は分かれそうですけど美令と和真の関係も僕は割と好みでしたし、それもあってラストも純粋に楽しむことができました。
ただ、軸になっている「罪と罰」の部分については簡単には言及できないな…と思います。
倉木達郎はあの時、白石健介を逃がすべきではなかった。
分かりますが、それはどこまでいっても理想論でしょう。
現場に居合わせた、特に、事情を知った上で若者の未来を一瞬でも思ってしまったなら、僕だって同じことをしていたかもしれません。
当の本人である白石健介くん(当時)だって、何も事情がなければそんなことはしなかった。
悪の根源はどう考えたって灰谷にあったはず。だけど、だからといって殺されていい人物だったかというと、そんなはずはない。
灰谷にだって何かの事情があったのかもしれない。
憎しみの連鎖が続いてしまったんだな…。
願望だけが通るなら、あの時、灰谷が何らかの詐欺容疑で正しく罰を受けていた未来を願ってやみません。
と、あくまでフィクションでありながらここまで考えさせてくれたのは、この『白鳥とコウモリ』の凄さのひとつと言えるでしょう。
というわけで…
今回もまた特に意味のない雑談が続いてしまいましたが、最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。
最後に余談ですが、
幻冬舎さんの公式ホームページに、本作の舞台となった場所の写真や説明が載ってて面白かったので貼っておきます。
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